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マクドナルド 18号軽井沢店
長野県 軽井沢マクドナルド

【軽井沢】国道18号線、朝六時のエッグマフィン

by 匿名2026年1月26日

早朝、国道18号線

夜が明けきらない軽井沢は、音が少ない。 12月の空気は鋭く、吐く息だけが確かに生きている証拠みたいだった。

国道18号線沿いのマクドナルド。 軽井沢仕様の、落ち着いた色の看板がぼんやりと浮かんでいる。 早朝でもドライブスルーは開いていて、エンジン音だけが一定のリズムで流れていた。

「おはようございます」

スピーカー越しの声が、やけに丁寧で、柔らかい。 笑顔が見えるわけでもないのに、なぜかそれが伝わってくる。

エッグマフィン。 ハッシュドポテト。 ホットコーヒー。

それだけでいいと思った。

かつては渋谷にオフィスがあった。 学生起業で、調子に乗るほど成功して、一時は羽振りも良かった。 仲間だと思っていた人間に裏切られ、気づけば会社は潰れていた。

今は、親の所有する別荘に身を寄せている。 子どもの頃は毎年のように来ていた軽井沢。 大人になってからは、忙しさを理由に、ほとんど足を運ばなかった場所。

昨夜は眠れなかった。 天井を見つめながら、何度も同じ後悔をなぞっていた。

紙袋を受け取り、店内の端に腰を下ろす。 ドライブスルー利用客が多く、店内は決して広くない。 時間帯によっては混むのだろうが、この時間はまだ静かだ。

エッグマフィンを頬張る。 ハッシュドポテトは、思っていた以上に熱い。 コーヒーを一口飲むと、体の芯まで温かさが落ちていく。

——仕事は失敗しても。 ——お金がなくても。 ——これぐらいは、まだ食べられる。

そう思った瞬間、胸の奥で何かが少しだけ動いた。 情けなさではなく、微かな安堵だった。

「…まだ、終わってないな」

外に出ると、空気は相変わらず冷たい。 でも、さっきよりも痛くは感じなかった。

雲場池へ行こう。 朝の澄んだ空気を、肺いっぱいに吸い込もう。 そのあと、沢村でバケットを一本買って帰ろう。

軽井沢価格で何もかも高い。 でも、食に強いこだわりがなければ、マックで十分だ。 そう思える場所が、今の自分にはありがたかった。

ハンドルを握りながら、ゆっくりとアクセルを踏む。

また、1からやり直そう。

国道18号線を離れる頃、 軽井沢の朝は、少しだけ明るくなり始めていた。

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