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葉っぱの気持ち森のカフェ
伊勢原喫茶店

葉っぱの気持ち 森のカフェにて

by 匿名2025年12月21日

伊勢原の墓地は、午後になると風の音がはっきり聞こえる。  線香の煙が細く揺れ、その向こうで、木々の葉が擦れ合っていた。

 祖父の墓は、いつも変わらない。  石の冷たさも、花立ての角度も、幼い頃から同じだ。  私は手を合わせ、何も願わず、ただ少しだけ頭を下げた。

 帰り道、車を走らせていると、通り沿いに小さな看板が現れた。  森へ続く細道の入口に、控えめな文字で店名が書かれている。

 葉っぱのきもち

 以前から気になってはいたが、立ち寄る理由がなかった。  今日はなぜか、ハンドルを切るのに迷いがなかった。

 駐車場はほぼ埋まっていて、名前と車のナンバーを書くよう促された。  昼を過ぎているというのに、人気は衰えないらしい。

 しばらく車内で待っていると、森の奥から人影が現れた。  その瞬間、なぜか「迎えに来た」という言葉がしっくりきた。

 玄関で靴を脱ぎ、スリッパを受け取る。  顔を上げると、木と布と乾いた植物に包まれた空間が広がっていた。  さらに奥、サンルーム越しには、まるで一枚の絵のような森がある。

 席に着くと、ワンプレートランチの説明を受けた。  選べるキッシュは季節のもの。今日はコーンとベーコンだという。

 運ばれてきた皿は、静かだった。  キッシュ、エビと春野菜のフリット、スパイスカレー、キャロットラペ、ひじきのサラダ。  どれも声高に主張せず、ただそこに在る。

 キッシュを一口。  甘みと塩気が同時に広がり、思わず息がゆるむ。  サラダは瑞々しく、カレーは穏やかな辛さで、雑穀米とよく合った。

 食べながら、祖父のことを思った。  この人は、こんな店を知っていただろうか。  きっと知らない。だが、もし連れてきたら、黙って全部食べただろう。

 食後に頼んだ無花果のパウンドケーキとアイスコーヒーは、余韻のようだった。  甘さも苦さも、長く残らない。

 窓の外で、葉が揺れている。  風の音が、言葉の代わりに何かを伝えている気がした。

 墓参りの帰りに、こんな場所に立ち寄るとは思わなかった。  だが、祖父に報告するなら、こう言えばいい。

 ——今日は、いい休憩をした。

 そう思いながら、私はゆっくりと席を立った。

この物語に

葉っぱの気持ち森のカフェ

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