横浜の海岸通り、潮の香りと歴史が溶け合う場所に佇むホテルニューグランド。その一階に位置する「ザ・カフェ」の重厚な扉を押し開けると、そこには外の世界とは切り離された、緩やかで気品ある時間が流れていました。 琥珀色の時間と、銀のトレイ 高い天井から降り注ぐ柔らかな光が、磨き上げられたウッドパネルに反射し、店内を琥珀色の温もりで満たしています。窓の外では山下公園の緑が揺れ、時折、氷川丸の汽笛が遠くから低く響いてきます。それはまるで、古き良き横浜の記憶を呼び覚ます合図のようでした。 伝統を味わう贅沢 テーブルに運ばれてきたのは、この場所が発祥とされる**「シーフードドリア」**。 スプーンを入れれば、芳醇なバターの香りが立ち上り、滑らかなホワイトソースとコクのある海老の旨味が口の中で見事に調和します。かつてのパリを思わせるその味わいは、歴代のシェフたちが守り続けてきた誇りの結晶そのものです。 デザートに選んだ**「プリン・ア・ラ・モード」**は、まるで宝石箱のような華やかさでした。 銀の器に盛られた、少し硬めのカスタードプリン。その傍らには、丁寧にカットされたフルーツが彩りを添えています。戦後、GHQに接収されていた時代、アメリカ人将校の夫人たちを喜ばせるために考案されたというその一皿には、おもてなしの心が今も息づいています。 変わらないものがあるという安らぎ 隣のテーブルでは、老夫婦が静かにコーヒーを啜り、窓際では若い恋人たちが未来を語らっています。 時代がどれほど速く過ぎ去ろうとも、ここにある「本物」だけが持つ静寂は決して揺らぎません。一杯のコーヒーが冷めるまでの間、私はただ、この歴史という名の贅沢に身を委ねていたのでした。 。
