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サイゼリヤ 港南中学校前店
東京 品川ファミリーレストラン

安いボトルで、もう一度

by テスト2025年12月29日

駅からは離れているが、店は広くて使いやすい。 歩いてきた距離の分だけ、頭の中も少し整理されていた。

サイゼリヤ 港南中学校前店。 夜遅くでも明るく、誰にとっても平等な照明が、今夜の話し合いには不思議と合っていた。

ITベンチャーの社長である僕は、「話がある」と呼び出されていた。 相手は社員たち。 そして、話題の中心には、共同経営者の守屋がいた。

「このままでは、一緒にやれません」 静かな口調だったが、その言葉は重かった。 数人が、まとめて辞めるという。

このメンバーが一気に抜けたら、会社は確実に傾く。 それでも僕は、守屋を庇った。 理念の話、これまでの時間、理想と現実。 腹が減っていた僕の テーブルの上には、ミラノ風ドリアと若鶏のディアボラ風。 玉ねぎのズッパからは、甘い香りが立ちのぼる。

議論は熱を帯び、やがて冷めた。 結果は、変わらなかった。 彼らは辞めると決めた。

静かに席を立つ背中を見送りながら、 ズッパのスープが染み込んだパンを口に運ぶ。 オニオンの甘みが、やけに優しかった。

しばらくして、守屋が店に入ってきた。 気まずそうな顔。 僕は言った。 「まぁ、とりあえず、飲まないか」

彼は少し訝しげだったが、椅子に座った。 ワインをボトルで頼み、辛味チキン、エスカルゴ、ソーセージピザ。 チーズはよく伸び、ソーセージは香ばしい。 若鶏は相変わらずジューシーだった。

ふと、思う。 ――それにしても、この店、なんでこんなに安いんだ。 デカンタも、料理も。 国民栄誉賞ものだな、と本気で思った。

多くを失った夜だった。 でも、全部が終わったわけじゃない。

「出直しだな」 そう言うと、守屋は小さくうなずいた。

安いボトルで、乾杯した。 また、二人で。

この物語に

サイゼリヤ 港南中学校前店

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