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鳥貴族蒲田東口店
東京 蒲田やきとり

「焼き鳥は、やはり2本だった」

by 匿名2026年2月26日

去年、私は婚活パーティーに三十回参加した。

戦績、三十戦三十敗。

ここまでくると、もはや様式美である。

そして今年。

私は再び会場へと向かった。

理由は単純だ。

人は簡単には諦めない生き物だからである。

現実から目を逸らす能力において、私はかなり優秀だった。

婚活パーティーは今年も平常運転だった。

全員が少し緊張し、 全員が少し笑顔を作り、 全員が少し自分を良く見せる。

私は今年も、

・無難な会話 ・無難な笑顔 ・無難な撃沈

を完璧にこなした。

結果発表。

私の番号は、やはりどこにもなかった。

安定の敗北である。

もはや動揺すらない。

帰り道。

心が塩分を欲していた。

こういう日は、なぜか塩っぽいものが食べたくなる。

人生の敗北と塩味には、深い関係があるのかもしれない。

私は蒲田で途中下車した。

赤い看板。

鳥貴族。

吸い込まれるように入店。

店内は賑やかだった。

笑い声。 乾杯の音。 人生を謳歌している人々。

私は静かに一人席へ座る。

この仕切りが実にありがたい。

世界と適度な距離を保てる。

ハイボール。

モモ焼き鳥、たれ。

運ばれてきた皿を見て、私は思った。

やはり2本。

鳥貴族は、なぜいつも2本なのか。

私は完全に一人なのに。

その時だった。

隣の席に女性が座った。

30代くらい。

ややふっくら。

どこか、やすこ似。

柔らかい空気感。

安心感の塊のような存在。

ふと目が合う。

女性が軽く微笑む。

「一人なんですか?」

まさかの会話発生。

私は少しだけ背筋を伸ばした。

「ええ……まあ……人生いろいろありまして」

便利な言葉である。

人生いろいろ。

だいたいのことはこれで誤魔化せる。

女性はクスッと笑った。

会話が続く。

自然に続く。

不思議なほど続く。

(……これは……?)

去年三十連敗した男の心に、 静かなざわめきが生まれる。

(もしかして……)

(これは……)

(運命的な……)

その時だった。

後ろから声がした。

「お待たせー」

振り返る女性。

立っていたのは、

ガッチリした体格の男。

どう見ても勝者側の人間。

「ごめんね、ちょっと遅れちゃって」

女性が自然に答える。

「ううん、大丈夫」

そして一言。

「旦那。」

……。

…………。

……………………。

私は静かにハイボールを飲んだ。

焼き鳥は今日も2本。

人生も今日も苦い。

「……まあ、そういう日もある」

私は誰に言うでもなく呟いた。

鳥貴族の店内は変わらず賑やかだった。

私の恋愛運だけが、今日も静まり返っていた。

私は焼き鳥を一本食べた。 ⸻ もう一本は、 まだ残っている。 ⸻ そういうことに、しておこう

この物語に

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