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食堂 都
茅ヶ崎定食 町中華

変わった街と、変わらなかった一杯

by 匿名2026年2月7日

学生だった頃、 俺たちのたまり場は、ダイクマの前のケンタッキーだった。

放課後に制服のまま集まって、 油の匂いが染みついたエプロンを外し、 「今日、海行く?」 その一言で夜の予定が決まった。

バイト同士で花火をした。 線香花火が落ちるまでの沈黙が、やけに長く感じられた夜もあった。 誰かが誰かを好きになって、 それがバレて、 喧嘩して、 次の日には何事もなかったように一緒に働いた。

あの頃の茅ヶ崎は、 未来なんて考えなくてよかった街だった。

それから四十年以上が経って、 久しぶりに降りた茅ヶ崎駅は、 すっかり別の顔をしていた。

木造だった駅舎は姿を消し、 イトーヨーカドーも、もうない。 見慣れたはずの風景が、 記憶よりずっと整っていて、 その分、少しだけよそよそしかった。

「こんな街だったっけな」

そう思いながら歩いていると、 そこに、ぽつんと残っていた。

食堂 都

看板も、店構えも、 時間に置いていかれたみたいに、 ちゃんと、そこにあった。

冷やし中華を頼んだ。 1,050円。 昔より高くなったはずなのに、 丼の前に座ると、なぜか高いとは思わなかった。

刻みチャーシュー、錦糸卵、きゅうり、キャベツ、ナルト。 酸味のきいたつゆが、 夏の記憶をそのまま連れてくる。

麺は相変わらず多い。 「普通が大盛り」 その感じも、変わっていない。

店内は古い。 テレビは角の上。 カウンター、テーブル、座敷。 小さい虫が一匹、ふわりと飛んでいた。

でも、不思議と嫌じゃなかった。 生きてる店だな、と思った。

隣の客のサンマーメンが、 大げさなくらい大きくて、 思わず笑ってしまう。

次はチャーハン。 いや、かつ丼もいい。 塩鯖定食も、味噌汁がうまいって聞いた。

未来の予定なんて、 久しぶりに、どうでもよくなった。

街は変わる。 建物も、人も、役割も、 気づけば全部入れ替わっている。

でも、 変わらない味がある場所では、 自分だけは、ちゃんと元に戻れる。

時間に勝つんじゃなくて、 時間と一緒に生きてきたものだけが、 こうして、今もそこにある。

それがある限り、 俺たちの青春は、 まだ終わっていない。

この物語に

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